SSブログ

蕪村・百川・若冲そして月渓らの「芭蕉翁像」(その十四)  [芭蕉翁像]

その十四 眼を閉じている「芭蕉翁像」(蕪村筆)

 『蕪村全集六絵画・遺墨(佐々木承平他編)』に収録されている下記の十一点について、
これまでに、「④ 座像(左向き、褥なし。『蕪村遺芳』)を除いて、全て、概括してきた。今回、この最後の一枚を見て行きたい。

① 座像(正面向き、褥なし、安永八年作=一七七九作。上段に十六句、中段に前書きを付して四句、その四句目=「人の短を言事なかれ/おのれか長をとくことなかれ/もの云へは唇寒し秋の風」 江東区立芭蕉記念館蔵)→(その七)
② 半身像(左向き、杖、笠を背に、安永八年作=一七七九作。『蕪村(創元選書)』)→(その八)
③ 座像(左向き、頭陀袋、褥なし、安永八年作=一七七九作。金福寺蔵)→(その六)
④ 座像(左向き、褥なし。『蕪村遺芳』)→(その十四)
⑤ 半身像(左向き、杖、頭陀袋を背に。個人蔵)→(その十一)
⑥ 全身蔵(左向き、杖。左上部に「人の短をいふことなかれ/己が長をとくことなかれ/もの云へは唇寒し秋の風」 逸翁美術館蔵)→(その十)
⑦ 全身像(右向き、杖なし。右上部に人の短を言事なかれ/おのれか長をとくことなかれ/もの云へは唇寒し秋の風)」『蕪村遺芳』)→(その九)
⑧ 座像(正面向き、褥なし、天明二年=一七八二作。『俳人真蹟全集蕪村』)→(その十三)
⑨ 座像(正面向き、褥なし。『上方俳星遺芳』)→(その十三)
⑩ 座像(左向き、褥なし、款「倣睲々翁墨意 謝寅」。逸翁美術館蔵)→(その十二)
⑪ 座像(左向き、褥なし。『大阪市青木嵩山堂入札』)→ (その一)

蕪村遺芳.jpg
『蕪村全集六絵画・遺墨(佐々木承平他編)』所収「89『芭蕉像』画賛」

 『蕪村全集六絵画・遺墨(佐々木承平他編)』の「89『芭蕉像』画賛」で、次のとおり紹介されている。

紙本墨画 一幅 
一〇〇・一×三〇・七cm
款 「夜半亭蕪村拝写」
印 「長庚」「春星」(朱白文連印)
賛  後掲
『蕪村遺芳』
(賛)
蓬莱に聞はやいせの初便
先たのむ椎の木も有夏木立
名月や池をめくりて終宵
海くれて鴨の声ほのかにしろし

 この「芭蕉像」は白帽子である。「安永八年作=一七七九作」の「① 座像」「② 半身像」「③ 座像」も、白帽子であった。その特徴からする、その「安永八年(一七七九)」の、金福寺に奉納した「③ 座像」と、同一時頃の作品なのかも知れない。
 ここで、「国文学 解釈と鑑賞(特集与謝蕪村)837 2001/2」所収「蕪村の描いた芭蕉(早川聞多稿)」で紹介されている「芭蕉像に賛された発句一覧(句の上の数字は引用回数、句の下に、詠句年齢・出所出典)」を、以下に掲げて置きたい。
 ※は、この賛にある句である。

⑥ 芭蕉野分して盥に雨をきく夜かな (三八歳・茅舎の感)
⑤ 花にうき世我我酒白く飯黒し   (四〇際・虚栗)
⑤ 夏衣もいまだ虱を取り尽さず   (四二歳・野ざらし紀行)
④ 名月や池をめぐりて夜もすがら  (四三歳・あつめ句)   ※
③ わが衣に伏見の桃の雫せよ    (四二歳・野ざらし紀行)
③ 海暮れて鴨の声ほのかに白し   (四二歳・野ざらし紀行) ※
③ 世にふるもさらに宗祇のやどりかな(四三歳・笠の記)
③ おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな (四五歳・鵜舟)
③ 朝夜さに誰がのつしまぞ片心   (四五歳・桃舐集)
③ 行く春や鳥啼魚の目は泪     (四六歳・奥の細道)
③ 物いへば唇寒し秋の風      (四八歳頃・芭蕉庵小文庫)

③ 蓬莱に聞かばや伊勢の初便    (五一歳・真蹟自画賛)  ※
② 馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり  (四二歳・野ざらし紀行)
② あけぼのや白魚白きこと一寸   (四二歳・野ざらし紀行)
② 年暮れぬ笠着て草鞋はきなから  (四二歳・野ざらし紀行)
② 梅白しきのふや鶴をぬすまれし  (四二歳・野ざらし紀行)
② 古池や蛙飛こむ水の音      (四三歳・蛙合)
② いてや我よき衣着たり蝉衣    (四四歳・あつめ句)
② 五月雨に鳰のうき巣を見にゆかん (四四歳・泊船集)
② 寒菊や粉糠のかゝる臼の端    (五〇歳・炭俵)
② この道を行く人なしに秋の暮   (五一歳・書簡)

① 櫓の声(せい)波を打つて腸凍る夜や涙 (三八歳・寒夜の辞)
① 年の市線香買ひに出でばやな   (四三歳・続虚栗)
① おもしろし雪にやならん冬の雨  (四四歳・俳諧千鳥掛)
① 夕顔や秋はいろいろ瓢哉     (四五歳・真蹟懐紙考)
① このあたり目に見ゆるものは皆涼し(四五歳・十八楼の記)
① 粟稗にまづしくもあらず草の庵  (四五歳・笈日記)
① あかあかと日はつれなくも秋の風 (四六歳・奥の細道)
① 初時雨猿も小蓑を欲しげなり   (四六歳・猿蓑)
① 蛍の笠落したる椿かな      (四七歳・真蹟色紙)
① 菰を着て誰人います花の春    (四七歳・真蹟草稿)

① 先たのむ椎の木も有り夏木立   (四七歳・幻住庵の記) ※
① ほととぎす大竹藪を漏る月夜   (四八歳・嵯峨日記)
① 子供等よ昼顔咲きぬ瓜剥かん   (五〇歳・藤の実)
① 稲妻や闇の方ゆく五位の声    (五一歳・有磯海)


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。