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芦雪あれこれ(白象図) [芦雪]

その四 白象図

白象1.jpg
「白象黒牛図屏風」(芦雪筆・六曲一双・紙本墨画)の「白象図屏風」(右隻)
各一五五・三×三五九・〇cm プライスコレクション

 巨大な像に真っ黒な烏が二羽止まっている。象のイメージというのは、普賢菩薩が乗る白象で、白のイメージである。芦雪が生まれる二十数年前の享保十三年(一七二八)に、オランダ船によって日本に上陸し、長崎から江戸まで運ばれ、時の将軍徳川吉宗の上覧に供されている。
 享保十四年(一七二九)五月二十五日、象の江戸到着を告げる瓦版(象潟屋清八板元)が、『日本絵画のあそび(榊原悟著)』で紹介されている。

「象の年六歳 長さ一丈、高さ五尺余、四足廻り一尺五寸程、鼻の長さ四尺程、鼻の廻り一尺五寸、牙の長さ一尺二寸但し上あごより出る。眼三寸形(なり)は笹の葉のごとし、象の寿命五百年をたもつとなり。」

 芦雪は、実物はともかくとして、刷り物などで、実物に近い象を見ているであろう。そして、芦雪の師・応挙よりも年齢的に先輩格の若冲にも何種類かの象の作品があり、それらの作品も何らかの形で拝見やら情報などを得ていることであろう。
 しかし、芦雪が描く「白象黒牛図屏風」は、芦雪ならでは趣向が施されている。この「白象図屏風」ですると、この象の背と後ろ脚と尻が、画面の外にはみだしている。
即ち、屏風の六曲(六扇=六面)の大画面に収まりきらないほど大きいということ訴えようとしている。さらに、大きな象に小さな烏を配置して、大きなものはさらに大きく、小さいものはさらに小さく見えるように、「対比の妙」を現出させている。
 さらに、「白象黒牛図屏風」のタイトルのように、左隻の「黒牛」の「黒」と、この右隻の「白象」の「白」の対比だけでなく、「黒牛」の「黒」と「子犬」の「白」、そして、この「白象」の「白」に、二羽の「烏」の「黒」を対比させると、二重にも三重にも趣向を凝らしている。
 その造形的な趣向の他に、この「白象」では、その小さな二羽の烏の一羽は、口を開けて、隣の烏に話しかけているような図様と、もう一羽の烏は、この大きな象をじっくり観察しているような図様なのである。ここに、芦雪の「遊びこころ」をさりげなく現出している雰囲気なのである。
 とにかく、芦雪の「空間マジック」、そして、「視覚的トリック」の妙は、師の応挙や奇想画の旗手の若冲を遥かに凌ぐものがあろう。

象1.jpg

「象と鯨図屏風」(若冲筆・六曲一双・紙本墨画)「右隻」MIHO MUSEUM蔵
 各一五九・四×三五四・〇cm

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