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芦雪あれこれ(黒牛図) [芦雪]

その五 黒牛図

黒牛1.jpg
「白象黒牛図屏風」(芦雪筆・六曲一双・紙本墨画)の「黒牛図屏風」(左隻)
各一五五・三×三五九・〇cm プライスコレクション

「白象黒牛図屏風」の「白象」は、「背と後ろ脚と尻」が大図面からはみ出し、この「黒牛」では、「肩と後ろ脚」が、やはり画面の外にはみ出している。それだけではなく、「白象」では、その背に二羽の黒い烏が乗っかっているのに対して、この「黒牛」では、その腹部に、一匹の白いむく毛の子犬がちょこんと、この画面を鑑賞する人の方向に視線を向けている。
さらに、「白象」(右隻)の大画面では、余白が、左の頭部から前脚の部分と背の二羽の烏が居る所だけなのに比して、こちらの「黒牛」(左隻)では、右の頭部から左の尻の方まで、余白が十分に取られ、また、その余白処理が絶妙で、その白の風のたなびきのようなものが、「白象」(右隻)に流れて、「左隻」と「右隻」との一体感を醸し出している。
「黒と白」「大と小」「余白処理」「対比」「モチーフの選択」「空間マジック」「視覚トリック」等々、その発想の「自在さ」「柔軟さ」「奇抜さ」に相まって、師の応挙の「写生的描写」の世界を一歩踏み出して、その応挙が目指した「新図・新意の尊重」(「真物を臨写して新図を編述するにあらずんば画図と称するに足らんや」=仙斎円山先生伝)の境地を達成したのは、応挙門下では、この芦雪一人であったかも知れない(『日本の美術八・№219号長沢芦雪・宮島新一編』)。
 巨大な動物をモチーフとし、「黒と白」との対比で作品化したものとして、若冲の「象と鯨図屏風」などが挙げられる。先に、その一つとして、その「象図」(右隻)を紹介したが、ここで、その「鯨図」(左隻)を参考までに掲げて置きたい。

鯨1.jpg
「象と鯨図屏風」(若冲筆・六曲一双・紙本墨画)「左隻」MIHO MUSEUM蔵
 各一五九・四×三五四・〇cm

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