SSブログ

町物(京都・江戸)と浮世絵(その七 酒井抱一・その二) [洛東遺芳館]

(その七) 酒井抱一(その二)「文読む美人図」

抱一・文読む美人図.jpg
酒井抱一筆「文読む美人図」一幅 太田記念美術館蔵

「二十代の抱一が多数描いた美人画の中でも最初の段階を示す作らしく、手つき足首など、たどたどしく頼りなさがあるが、側面の顔立ちが柔和で、帯の文様など真摯な取り組みが初々しい。安永期に活躍し影響の大きかった浮世絵師、磯田湖龍斎による美人画の細身なスタイルの反映があることも、制作時期の早さを示す。『楓窓杜綾畫』と署名し、『杜綾』朱文印を捺す。」(『酒井抱一と江戸琳派の全貌』所収「二章 浮世絵制作と狂歌」)

 抱一は、酒井家の家老、松下高除の著書『摘古探要』中の「等覚院殿御一代」(抱一の法名「等覚院文詮暉真」)に、「天明の頃は浮世絵師歌川豊春の風を遊ハしけるが(後略)」とあり、浮世絵の最大の流派である歌川派の始祖、「歌川豊春」(一七三五~一八一四)に、浮世絵美人画を学んだと目されている。
 豊春の出生地は、豊後国臼杵(うすき)ともいわれ、また、但馬国豊岡、江戸ともいわれている。京都に出て、江戸狩野派の鶴沢探鯨(たんけい)に学んだ後、江戸に出て烏山石燕(せきえん)に入門したという。
 豊春の門人の双璧は、初代歌川豊国と歌川豊広で、その両門下から秀抜した浮世絵師たちが多数輩出し、その後の浮世絵界をリードする一大勢力を築き上げている。「洛東遺芳館」にも、この豊春や豊国に連なる浮世絵が多数あり、応挙、そして、呉春に連なる「円山四条派」の作品と共に、一つの特色となっている。

豊春.jpg
歌川豊春筆「松風村雨図」絹本著色 一幅 洛東遺芳館蔵

補記一 江戸の琳派芸術 (出光美術館)

http://blog.livedoor.jp/aa3454/archives/72320153.html

「遊女と禿図」(抱一筆)

「天明七丁未初冬尻焼猿人画」の署名と「猿人」の朱文印が捺されている。抱一、二十七歳の作。賛は吉原五明楼の扇屋花扇が、寝惚子こと大田南畝の戯文を書いたもので、絵の花魁のモデルは花扇と見る説もある。

補記二 「生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌」(総出品目録)

http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2011/1010/1010_list2.pdf

補記三 酒井抱一「松風村雨図」(細見美術館蔵)

「松風村雨図」は浮世絵師歌川豊春に数点の先行作品が知られる。本図はそれに依ったものであるが、墨の濃淡を基調とする端正な画風や、美人の繊細な線描などに、後の抱一の優れた筆致を予測させる確かな表現が見出される。兄宗雅好みの軸を包む布がともに伝来、酒井家に長く愛蔵されていた。(『酒井抱一と江戸琳派の全貌』所収「二章 浮世絵制作と狂歌」)

www.j-bunka.jp/comment/10suzuki.pdf


抱一 村雨図.jpg
コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。