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町物(京都・江戸)と浮世絵(その十 酒井抱一・その五) [洛東遺芳館]

(その十) 酒井抱一(その五)「抱一の代表作を巡るドラマ」

夏秋草図屏風.jpg
酒井抱一筆「夏秋草図屏風」紙本銀地着色 二曲一双 各一六四・五×一八一・八cm
東京国立博物館蔵(重文) 文政四・五年(一八二一・二二)頃

「銀箔地の右隻は夕立にしなだれる夏草、左隻には風にたなびく秋草を描く。一八二一(文政四)年末頃。十一代将軍徳川家斉の実父、一橋治済(はるさだ)の注文で描かれたことが、下絵とともに出現した書付から判明した。もとは光琳の「風神雷神図屏風」の裏面に描かれていたが、現在は別々の屏風に仕立て直されている。機知に富む構成、曲線を多用した優美で卓越した描写など、抱一作品の最高峰を誇る。」(『別冊太陽 酒井抱一 江戸琳派の粋人』所収「江戸の風流を描く(岡野智子稿)」)

 この解説文の、「下絵とともに出現した書付から判明した。もとは光琳の『風神雷神図屏風』の裏面に描かれていたが、現在は別々の屏風に仕立て直されている」の、その下絵なるものの、「夏秋草図屏風草稿」は、次のものなのである。

抱一下絵.jpg
酒井抱一筆「夏秋草図屏風草稿」紙本着色 二曲一双 各一六二・〇×一八一・四cm
出光美術館蔵 文政四年(一八二一)

「一九九一年の発見当時、大きく話題になった『夏秋草図屏風』の本下絵。もとは折り畳まれて保管されていたようだが、現在屏風に改装されている。その屏風の裏に添付されている書付によると、この下絵は文政四年十一月九日に、抱一から注文主の一橋治斎に宛てた、伺下絵であった。この下絵から本絵への制作過程に、構図上の変更はほとんどない。」
(『別冊太陽 酒井抱一 江戸琳派の粋人』所収「江戸の風流を描く(岡野智子稿)」)

 この「夏秋草図屏風草稿」(「夏秋草図屏風」下絵)が発見されたのは、平成三年(一九九一)のことなのである。そして、この草稿(下絵)には書付があって、そもそもは、尾形光琳の「風神雷神図屏風」の裏に描かれたものであることが判明したというのである。

夏秋草図屏風(風神雷神図との関連).jpg
上段(表) 尾形光琳筆「風神雷神図屏風」(二曲一双) 東京国立博物館蔵
下段(裏) 酒井抱一筆「夏秋草図屏風」(二曲一双)  東京国立博物館蔵

 ここまで来ると、光琳筆「風神雷神図屏風」は「金地」なのに対して、抱一筆「夏秋草図屏風」は「銀地」を配したということが鮮明になって来る。
 さらに、
光琳筆「風神雷神図屏風」は、「風神雷神」という「天」に対して、抱一筆「夏秋草図屏風」は、「夏秋草」という「地」を配したということが鮮明になって来る。
 さらに、
光琳筆「風神雷神図屏風」の「風神」に対して、抱一は「風に靡く秋草」、その光琳の「雷神」に対して、抱一は「雷雨に打たれる夏草」を配したということが鮮明になって来る。

 その上で、この下絵が描かれた文政四年(一八二一)は、三月から大旱魃に見舞われた年で、七月に漸く降雨があったが、抱一が「夏秋草図屏風」を手掛けるにあたり、風神雷神に雨乞いの祈りを託し、雨の恵みを受ける夏草を描いたとなると、これは、誠に、数奇なドラマの一コマということになる。

 さて、そのドラマの一コマに続く、次の一コマは、「風神雷神あれこれ」(画像は省略)である。

一 俵屋宗達筆「風神雷神図屛風」二曲一双 紙本金地着色 江戸時代(17世紀) 各154.5×169.8㎝ 国宝 建仁寺蔵

二 尾形光琳筆「風神雷神図屛風」二曲一双 紙本金地着色 江戸時代(18世紀) 各166×183㎝ 重文 東京国立博物館蔵 

三 酒井抱一筆「風神雷神図屛風」二曲一双 紙本金地着色 江戸時代(19世紀) 各170.7×170.2㎝ 出光美術館蔵

四 鈴木其一筆「風神雷神図襖」四面表裏(部分) 絹本着色 各面169×116㎝ 東京富士美術館蔵

これらのドラマの解説は、次の「補記一・補記二」に、その一部が掲載されている。そして、「補記三」に続くのである。


補記一 「夏秋草図屏風」の見どころチェック! (東京国立博物館)

http://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/2013/09/15/夏秋草図屏風見どころ/

補記二 京琳派、江戸琳派の「風神雷神図」

https://intojapanwaraku.com/art/20170330/10332

補記三 『光琳百図』(国立国会図書館デジタルコレクション) 八九頁中の「八二頁と八三頁」

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/850491


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