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町物(京都・江戸)と浮世絵(その十七 歌川国芳「其のまま地口 猫飼好五十三疋」など) [洛東遺芳館]

(その十七) 歌川国芳「其のまま地口 猫飼好五十三疋」など

国芳 猫一.jpg
歌川国芳「其のまゝ地口猫飼好五十三疋 上中下」渡邊木版美術画舗蔵 (補記一)

 この「其のまゝ地口猫飼好五十三疋 上中下」の、「上中下」というのは、浮世絵版画(錦絵)の、標準的な「大判竪(たて)三枚続(つづき)」の「上・中・下」で、この右の一枚目には、「其(その)まま地口/猫飼好五十三疋/上」との表示がある。
 そして「上」の字の上方に、「版元印」と「検印」とかは不明だが、二つの印が捺されているようである(「中」「下」にも、左の下方に何か「印」が捺されているようである)。

 「大判三枚続」ものは、上記のように、「横に三枚続き」が標準スタイルなのだが、これは、一枚目が、「上」の表示、そして、二枚目に「中」、三枚目に「下」と表示している。
署名は、「一勇斎国芳戯画」で、一枚目(上)は、右の半ば、二枚目(中)と三枚目(下)は、右下に為されている。そして、三枚目(下)の左端(末尾)に、「版下」の名(伊場屋仙三郎)が書かれているようである。
 どうも、「上・中・下」と表示したのは、「横に三枚続き」(標準スタイル)ではなく、「竪(立て=縦)に三枚続き」を、作者(国芳)は意図しているように思われる。

猫上.jpg

(上)
『其のまま地口 猫飼好五十三疋』(そのままぢぐち・みゃうかいこう・ごじゅうさんびき)
=東海道五十三次の宿場町名を、地口(語呂合わせ)しで猫の仕草で描いている(「地口」というのは、両方を「平仮名」にして対比すると分かり易い)。
1 日本橋(にほんばし)=「二本(にほん)だし(「二本の鰹節を引っ張り出す」と「出汁」との掛け)」
2 品川(しながわ)=「白顔(しらがを)の猫」
3 川崎(かわさき)=「蒲焼(かばやき)を嗅いている」
4 神奈川(かながわ)=「(猫が)嗅ぐ皮(かぐかわ)」
5 程ヶ谷(ほどがや)=「喉かい(のどかい)=喉が痒い」
6 戸塚(とつか)=「はつか(二十日鼠)を睨んでいる猫」
7 藤沢(ふじさわ)=「ぶちさば(鯖を咥えたぶち猫)」
8 平塚(ひらつか)=(子猫が)「育(そだ)つか」
9 大磯(おおいそ)=「(獲物=蛸が)重(おも)いぞ」
10 小田原(おだわら)=「むだどら(鼠に逃げられて無駄走りのどら猫)」
11 箱根(はこね)=「へこね(鼠に餌を取られてへこ寝する)」
12 三島(みしま)=「三毛(みけ)ま(三毛猫の魔物=化け猫=猫又)」
13 沼津(ぬまづ)=「鯰(なまづ)を睨んでいる猫」 
14 原(はら)=「どら(猫)」
15 吉原(よしわら)=は「ぶち腹(はら)=(腹もぶちだ)」
16 蒲原(かんばら)=「てんぷら(を食おうとしている猫)」
17 由比(ゆい)=「鯛(たい)を口にしている猫」
18 興津(おきつ)=「(猫が)起(おき)ず」
19 江尻(えじり)=「(猫が)齧(かじ)る」

猫中.jpg

(中)
20 府中(ふちゅう)=「(猫が)夢中(むちゅう)」
21 鞠子(まりこ)=「張り子(はりこ)の猫」
22 岡部(おかべ)=「赤毛(あかげ)の猫」
23 藤枝(ふじえだ)=「ぶち下手(へた)=(ぶち猫は鼠取が下手だ)」
24 島田(しまだ)=「(魚が)生(なま)だ」
25 金谷(かなや)=「(猫の名前が)タマや」
26 日坂(にっさか)=「食(く)ったか」
27 掛川(かけがわ)=「(猫の)化(ば)け顔(がを)」
28 袋井(ふくろい)=「袋(ふくろ)い(り)=猫が頭を袋の中に入れている」
29 見付(みつけ)=「(猫の)ねつき(寝つき)」
30 浜松(はままつ)=「鼻熱(はなあつ)=猫の鼻が炭火で熱い」
31 舞坂(まいざか)=「(猫が)抱(だ)いたか」
32 新居(あらい)=「洗(あら)い=猫の顔洗い」
33 白須賀(しらすか)=「じゃらすか=子猫をじゃらすか」
34 二川(ふたがわ)=「当(あ)てがう=乳をあてがう」
35 吉田(よしだ)=「(猫が)起(お)きた」
36 御油(ごゆ)=二匹の猫の「恋(こい)」
37 赤坂(あかさか)=「(目指しの)頭(あたま)か」
38 藤川(ふじかわ)=「ぶち籠(かご)に居る猫」
39 岡崎(おかざき)=「尾(お)が裂(さ)け=尾が裂けて化け猫か」

猫下.jpg

(下)

40 池鯉鮒(ちりゅう)=「器量(きりょう)良しの猫」
41 鳴海(なるみ)=「軽身(かるみ)を見せる猫」
42 宮(みや)=「親(おや)猫」
43 桑名(くわな)=「(猫さん、それは)食(く)うな」
44 四日市(よっかいち)=「寄(よ)ったぶち=ぶち猫が寄り合っている」
45 石薬師(いしゃくし)=「(猫が)いちゃつき」
46 庄野(しょうの)=「(猫を)飼(か)うの」
47 亀山(かめやま)=「化(ば)け尼(あま)=猫が尼に化ける」
48 関(せき)=「牡蠣(かき)=猫が牡蠣の臭いを嗅いている」
49 坂下(さかのした)=「赤(あか)の舌(した)=猫の赤い舌」
50 土山(つちやま)=「ぶち邪魔(じゃま)=猫の恋を邪魔してる」
51 水口(みなぐち)=「皆(みな)ぶち(猫)」
52 石部(いしべ)=「みじめ(な猫)」
53 草津(くさつ)=「炬燵(こたつ)の上の猫」
54 大津(おおつ)=「上手(じょうず=鼠捕りが上手)」
55 京(きよう)=「ぎやう(猫に捕まった鼠の悲鳴)」。

補記一 国際浮世絵学会創立50周年記念「大浮世絵展」:中京テレビ

http://www2.ctv.co.jp/ukiyoe/2014/04/page/4/

補記二 猫飼好五十三疋

www.konekono-heya.com/ukiyoe/myoukaikou.html

補記三 其まま地口 猫飼好五十三疋

https://poohchan-cute.net/category/etc/etc-kuniyoshi-cats.html



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middrinn

歌川国芳はホント猫好きですよね(^^)
語呂合わせの出来はチト苦しいか^_^;
by middrinn (2018-02-14 19:15) 

yahantei

こういうのに接すると、どうにも脱帽ですね。語呂合わせも、声出して「国芳訛り」ですると、伝染する感じ? 「絵文字」が使えると面白いのかも? 当分、「猫尽くし」の感じです。
by yahantei (2018-02-14 21:45) 

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