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フリーア美術館逍遥(その二) [フリーア美術館]

(その二)宗達「勅撰和歌集『古今集』 花鳥下絵和歌巻」

花鳥下絵一.jpg

花鳥下絵二.jpg


Imperial Anthology, Kokinshu 花鳥下絵和歌巻
Type Handscroll
Maker(s) Artist: Tawaraya Sōtatsu 俵屋宗達 (fl. ca. 1600-1643)
Calligrapher: Hon'ami Kōetsu 本阿弥光悦 (1558-1637)
Historical period(s) Momoyama period, early 1600s
Medium Handscroll; ink, gold, silver, and mica on paper
Dimension(s) H x W (image): 33 x 968.3 cm (13 x 381 1/4 in)

(参考)

www.sotatsukoza.com/menu/sotatsukoza_shiryo4.pdf


【金銀泥鶴下絵三十六歌仙和歌巻について】  

陶芸家、故荒川豊蔵(1894~1985)は、昭和35年(1960)頃、愛知県の旧家で本作品を見出し、購入した。その和歌巻は、うぶな状態であった。しばらくして京都国立博物館に寄託され、のち文化庁の所有を経て、京都国立博物館に配置換えされた。その間、重要文化財に指定された。最初の 図版掲載は、林屋辰三郎ほか編『光悦』(第一法規出版、1964年)においてである。モノクロ図版で、 全図が紹介された。
本紙は厚口の間似合紙(雁皮紙)で、両面には厚く白色具引きが施されている。法量は、幅30・1 糎、長さ1356・0糎。見た目から想像できないほど、重量感がある。下絵は、金銀泥(金や銀の箔を細かく磨り潰し、膠水と練り合わせたもの)を用い、此岸から対 岸へ、海上高く、《鶴鳴き渡る》光景(挿絵・赤人の歌「若の浦に」)が長大に描かれている。
巻首の 金泥を刷いた洲浜は左方に長く伸び、全体の三分の一を占める。この洲浜の内に入る干潟は、鶴の餌場であり、餌を漁っていた鶴たちは、沖から寄せ来る満ち潮の波と音に気づく。数羽の鶴は洲浜 の上空を舞い飛び、やがて鶴は群れとなり、金泥と銀泥を刷いた雲の下へ、やがて雲の上を飛翔し、 海を越え、対岸にたどり着く。
幅三十糎の空間、視点を上下に、近く遠くに移動させ、鶴の躍動感 をみごとに表す。金銀泥の没骨描で鶴の形態を的確に捉え、生命感に溢れる。絵師は、失敗が許 されない、あしらい難い金銀泥を巧みに用い、凄まじいほどの素描力の持ち主である。金銀泥の豊 かなグラデーションの魅力は、白色具引き地から生まれる。  
三十六歌仙の和歌は、鶴の飛翔に添って、揮毫されている。散らし書きは奔放、自在である。和 歌本文の後に「光悦」黒文方印が捺されているが、古歌染筆では慣例として染筆者の署名捺印を 記すことはない。「光悦」印は後に押印されたものであろう。紙背には銀泥で胡蝶文が描かれ、紙継 ぎには「紙師宗二」金泥長方印が捺されている。

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