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江戸絵画(「金」と「銀」と「墨」)の空間(その一) [金と銀と墨の空間]

(その一)池田孤邨の「表・紅葉に流水図屏風」と「裏・山水図屏風」

池田孤邨一.jpg

池田孤邨「紅葉に流水図屏風」 六曲一双(表) 紙本金地着色 安政三年(一八五六)

池田孤邨二.jpg

池田孤邨「山水図屏風」 六曲一双(裏) 紙本墨画 安政五年(一八五八)
各一六六・〇×三四三・〇cm フリーア美術館蔵
【 色鮮やかな紅葉が流水の上に浮き沈みし、水辺には秋草が咲き乱れる。『光琳百図』に掲載されるような光琳の楓図屏風に影響を受けながら、抱一の「夏秋草図屏風」のモチーフも取り入れている。孤邨は「雨風にちれる花紅葉露霜にをれ伏す秋芒」が雅で哀れ深い我が国の心である、と述べており(『抱一上人真蹟鏡』序文)、まさに彼の信念を謳いあげた晩年の大作。対照的に裏面は水墨山水となっており、批判しつつも「もろこしの画」に造詣の深かった孤邨の両面をみることのできる作品である。 】
(『別冊太陽 江戸琳派の美(監修=岡野智子)所収「池田孤邨(岡野智子稿)」)

Pair of six-panel screens: Maple leaves on a stream (front); mountain views (reverse) → 屏風表・「紅葉に流水図屏風」、屏風裏・「山水図屏風」
Type Screens (six-panel) → 六曲一双
Maker(s) Artist: Ikeda Koson 池田孤村 (1801 - 1866)
Historical period(s) Edo period, 1856-1858
Medium Ink and color on gilded paper; ink on paper
Dimension(s) H x W (image, each screen): 166.3 × 343.2 cm (65 1/2 × 135 1/8 in)

 これまでの「風神雷神図幻想」そして「江戸の金と銀との空間」などの、そのゴール地点に位置するものとして、単純に「琳派(装飾画)」と「文人画(水墨画)」とを両睨みしている、江戸琳派の創始者・酒井抱一の高弟・池田孤邨(孤村)の、上記の「表・『紅葉に流水図屏風』」と、その「裏・『山水図屏風』」とを、その筆頭に挙げることも面白いであろう。

 この「表・『紅葉に流水図屏風』」は、まさしく、光琳そして抱一の後継者の一人である池田孤邨の真骨頂の作品と解して差し支えなかろう。

 そして、その「裏・『山水図屏風』」は、例えば、孤邨が師筋としている「宗達→光琳→抱一」の「琳派(公的空間)」に比して、そのアンチの「文人派(私的空間)」を象徴するところの「山水図」(「漢画」の私的投影的「山水図」)と、これまた解して差し支えなかろう。

 そして、それは、これまでの「金(ゴールド)」と「銀(シルバー)」の対比の世界ではなく、「表・『紅葉に流水図屏風』」が、公的な「晴(ハレ)」の空間(琳派的「公的空間」)とすると、「裏・『山水図屏風』は、私的な「褻(ケ)」の空間(文人派的「私的空間)」ということになる。
 と同時に、「金(ゴールド)」と「銀(シルバー)」とは、どちらも、「着飾った」空間を醸し出すということに対して、「水墨(水と墨)」の世界は、「着飾らない・地そのもの」の空間を醸し出すということに他ならない。
 また、「琳派(装飾画)」と「文人画(水墨画)」とを両睨みしているということは、たまたま、上記の「表・『紅葉に流水図屏風』」と「裏・『山水図屏風』」とに関してのものであって、池田孤邨その人に関してのものではないということは、やはり、特記しておく必要があろう。

(再掲) http://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-05-14

【  池田孤邨(孤村)   没年:慶応2.2.13(1866.3.29) 生年:享和1(1801)
江戸後期の画家。名は三信、字は周二、号は蓮菴、煉心窟、旧松道人など。越後(新潟県)に生まれ、若いころに江戸に出て酒井抱一の弟子となる。画風は琳派にとどまらず広範なものを学んで変化に富む。元治1(1864)年に抱一の『光琳百図』にならって『光琳新撰百図』を、慶応1(1865)年に抱一を顕彰した『抱一上人真蹟鏡』を刊行する。琳派の伝統をやや繊弱に受け継いだマンネリ化した作品もあるが、代表作「檜林図屏風」(バークコレクション)には近代日本画を予告する新鮮な内容がみられる。<参考文献>村重寧・小林忠編『琳派』 (仲町啓子稿) 】『朝日日本歴史人物事典』

コメント(2) 
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コメント 2

middrinn

「blog」に変えられたようですね(^_^;)
「アート」に投稿されればいいのに^_^;
by middrinn (2018-05-15 11:47) 

yahantei

久しぶりです。「アート」というのは、始めてなのですが、早速、その「アート」に衣替えさせて頂きます。
(追伸)そのうちに、middrinnさんの所にお邪魔します。
by yahantei (2018-05-15 14:49) 

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