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「光琳・乾山そして蕪村」周辺覚書(その二十一) [光琳・乾山・蕪村]

その二十一 乾山の「青・白桔梗図」

乾山桔梗一.jpg

Blue and white flowers on slender stalks → 青・白桔梗図(フリーア美術館蔵)
Type Hanging scroll (mounted on panel) → 掛幅
Maker(s) Artist: Inscription and seals of Ogata Kenzan (1663-1743)→尾形(緒方)乾山
Historical period(s) Edo period, 18th-19th century
Medium Color on paper → 紙本着色
Dimension(s) H x W (image): 128.5 × 47.3 cm (50 9/16 × 18 5/8 in)

(メモ)

一 元文五年(一七四〇)、乾山、七十八歳時の作。落款は「京兆七十八翁緒方深省画」。原題は「Blue and white flowers on slender stalks」(細い茎の青と白の花)だが、桔梗の花のようである。

二 この「青と白の花」は、先に紹介した「花籠図」(福岡市美術館・松永コレクション)、そして、「花籠桔梗図扇面」(フリーア美術館蔵)と同じ「青と白の桔梗図」なのであろう。

http://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-06-13



乾山桔梗二.jpg

乾山筆「花籠図」(福岡市美術館蔵)の「部分図」



乾山桔梗三.jpg

乾山筆「花籠桔梗図扇面」(フリーア美術館蔵)の「部分図」

三 晩年の乾山が、執拗に描く初秋の花「桔梗」は、上記のアドレスで、蕪村の「修行者(すぎょうしゃ)の径(こみち)にめずる桔梗かな」の句を引用しながら、『伊勢物語』(第九段「宇津の山」)が、その背景となっているのではないかということについて記したが、
やはり、遠く東国の江戸にあって、生まれ故郷の西国の京都への思いというのが、この「青と白の桔梗」の背景なのではないかという思いを深くする。

(再掲)
【  修行者(すぎょうしゃ)の径(こみち)にめずる桔梗かな
             (蕪村、安永六年=一七七七、六十二歳)

 句意は、「行脚の僧が、小径の傍らの桔梗を見つけ、しばし見とれている」のようなことであろうが、この「修業者」を、黄檗宗の修業僧・(霊海)乾山、そして、浄土宗の行脚僧・(釈)蕪村と置き換えてみると、この句のイメージが鮮明になって来る。
 その上で、この句の背景は、『源氏物語』(「野分」の段)ではなく、『伊勢物語』(第九段「宇津の山」)が、その背景となって来る。

( 行き行きて駿河の国にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、つたかえでは茂り、物心ぼそく、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者あひたり。
「かかる道はいかでかいまする」
といふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、文書きてつく。
駿河なる 宇津の山辺の うつつにも 夢にも人に 逢はぬなりけり。) (『伊勢物語』(第九段「宇津の山」) 】

四 そして、乾山の、この望郷の思いは、家兄光琳への思いと繋がっているのであろう。これまた、先に紹介した、光琳の「白地秋草模様小袖」にも、「青と白の桔梗」が描かれている。

http://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-06-11


乾山桔梗四.jpg

光琳筆「白地秋草模様小袖」(東京国立博物館蔵)の「部分拡大図」

五 次の「色絵桔梗文盃台(はいだい)」は、乾山陶器の白眉の一つに数えられている。

乾山桔梗五.jpg

乾山作「色絵桔梗文盃台」一基 色絵(上絵付) 高火度焼成 MIHO MUSEUM蔵
高七・〇 口径五・二 鍔径一四・八 底径六・〇 ㎝
【 盃台とは引盃(ひきさかずき)を乗せる台で、円筒形の高台に鍔(つば)が付き、中央の筒内に盃に残った酒露や湑(したみ)を流すようになっています。茶事の懐石で用いられ、客の数だけ乗せて持ち出します。通常、引盃と対になっているため漆器製品が多いですが、湑穴のない渡盞(とさん)には誠治染付など磁器製のものが見られます。この盃台はとても手の込んだ作りと意匠になっています。まず、そのしっかりとした成形技術。裾広がりの円錐形円筒高台に、透かしを設けた不整形の鍔が付けられていますが、鍔はわずかに下がり気味とはいえ、成形、焼成には高度な製陶技術が発揮されていることに驚かされます。次にそのデザイン性。鍔の表面には白泥と染付で桔梗の花弁が描かれ、さらに金彩で花弁と蕊(しべ)が描かれ、その裏面には白化粧と染付で下地を作り、その上から赤、緑、金の丸文が金の格子文と格子間に施されています。口縁には白化粧下地の上に外側に簡略化された瑞雲文、内側には半花文が赤と染付で施され七宝輪違文、その中に赤で唐花文を施しています。成形技術もさることながら、このデザイン性の素晴らしさは、乾山の卓抜した意匠力のなせる技でしょう。全面に透明釉を掛けて本焼した上絵付け色絵製品で、底は土見せ、きめ細かな白土が確認でき、中央に窯瑕(かまきず)が生じていますが、大きく伸びやかな乾山名が銹絵で記されています。この盃台は乾山の斬新で大胆な感性が存分に発揮された、乾山陶の白眉といっていい作品でしょう。】(『乾山 琳派からモダンまで(求龍堂刊)』所収「作品解説8」)

六 乾山には、「桔梗」を主題にした名品が多い。

http://www.miho.or.jp/booth/html/artcon/00000674.htm

乾山銹絵染付桔梗図筒向付

京都 江戸時代中期 18-19c 乾山陶製、色絵 H-8.8 D-7

https://blogs.yahoo.co.jp/les_fleurs3106/GALLERY/show_image.html?id=45239412&no=6
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