SSブログ

抱一画集『鶯邨画譜』と抱一句集『屠龍之技』(その九) [『鶯邨画譜』と『屠龍之技』]

その九 藪柑子に竹籠(抱一の「藪柑子と竹籠図」周辺)

  次のアドレスの、「本でだどる琳派の周辺」(「国立国会図書館(国立国会図書館デジタルコレクション)」)で、中村芳中の『光琳画譜』と酒井抱一の『光琳百図』・『尾形流略印譜』
について、次のように紹介している。

http://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/20/1.html#anchor1

【芳中の『光琳畫譜』が出版されてから13年後の文化12(1815)年、同じく江戸の地で、酒井抱一(1761-1828)が光琳の百回忌に遺墨展を催しました。その際に刊行されたのが『光琳百図』と『尾形流略印譜』の2冊です。ごく少部数の私家版としてつくられた初版本の表紙には、『光琳百図』に菊花、『尾形流略印譜』には燕子花をモチーフにした模様が雲母刷
きらずりで施されていました。菊と燕子花はいずれも光琳が得意とした題材で、この表紙デザインも抱一の光琳研究の成果といえます。『光琳百図』は抱一が光琳の作品を模写し集めたもので、表紙を簡素に変えて色々な版元から何度も再販されました。
琳派の造形は京都ではじまり、こうした版本を通じて江戸を中心とした庶民にも広く浸透していきました。 】

 これに続いて、『鶯邨画譜』について、次のように紹介している。

【書名の鶯邨とは酒井抱一の俳号で、抱一が49歳で移り住んだ根岸が鶯で有名だったことからきています。この資料は、絵手本として出版されました。梅の枝を描いた絵は『光琳百図』にある尾形光琳の模写に似ており、抱一が光琳の作品に学んでいたことがわかります。その他には和の草花や縁起物を描いたもの、平安時代から続くやまと絵という伝統的な様式の人物画が収められています。特徴的な美しいグラデーションは、拭きぼかしという版木をしめらせて刷る錦絵の高度な技法によるものです。
『光琳百図』と『尾形流略印譜』同様、初版本(1815年)の表紙は波模様の雲母刷でした。波も光琳の代表的モチーフで、のちに「光琳波」と呼ばれるようになり、特に工芸の分野ではよく利用されています。 】

 この『鶯邨画譜』も、そして、『光琳百図』・『尾形流略印譜』も、版本なのであるが、抱一には、別に『絵手鑑』(一帖七十二図・絹本著色墨画・「静嘉堂文庫美術館」蔵)という、肉筆画の画帖がある。
 この『絵手鑑』については、下記のアドレスで、「冨士山」「蓮池に蛙」「八鶴」の三点を紹介している。

http://www.seikado.or.jp/collection/painting/006.html

【酒井抱一(1761~1828)は、姫路藩主の弟として生まれ、尾形光琳の画風を継承し江戸で新たな展開をみせた江戸琳派を代表する画家。全72図が画帖の表裏に貼りこまれた本作は、抱一が光琳のみならず、狩野派・土佐派・円山四条派・中国画など幅広い画技を習得していたことを如実に物語る作品。抱一自身による箱書のある内箱、酒井道一(どういつ)(抱一の画風に傾倒し、雨華庵(うげあん)四世を継ぐ)による外箱を備え、装丁(そうてい)も当初のものと考えられる。伊藤若冲の版画帖『玄圃瑤華(げんぽようか)』の図様を取り入れた画や、当時流行していた「古画趣味」を反映した王朝の古典人物、俳画など、おさめられた画はバラエティーに富む。抱一の多彩な魅力がつまった珠玉の画帖である  】

絵手鑑一.jpg
 (十九)富士山    (二十一)蓮池に蛙     (三十)八鶴

 この『絵手鑑』は「七十二図」(各二五・一×一九・七㎝)から成るが、上記の括弧書きは、その収載番号である(『琳派五―総合―』所収「静嘉堂文庫美術館蔵酒井抱一筆「絵手鑑について」(玉蟲敏子稿)」)。
 その(六十五)に「藪柑子」と題するものがあるが、抱一は、この「藪柑子」に、「燕子花」などと同じような特別の思い入れが有ったのかも知れない。その句集の『屠龍之技』では、「藪柑子」の句は目につかない。

抱一・藪柑子.jpg

抱一画集『鶯邨画譜』所収「藪柑子と竹籠図」(「早稲田大学図書館」蔵)
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/chi04/chi04_00954/chi04_00954.html

 鈴木其一には、『草花十二ヵ月画帖』(各一六・七×二一・二㎝)の「十二月」に「雪と藪柑子」と『月次花鳥画帖』(各二〇・二×一八・四㎝)に「藪柑子」が収載されている。

其一・藪柑子一.jpg

鈴木其一筆『草花十二ヵ月画帖』所収「雪と藪柑子」図(「MOA美術館」蔵)

其一・藪柑子二.jpg

鈴木其一筆『月次花鳥画帖』所収「藪柑子」図(「細見美術館」蔵)

 其一の孫弟子に当たる中野其玉の『其玉画譜』にも、「藪柑子」は収載されている。

其玉・藪柑子.jpg

中野其玉筆『其玉画譜』所収「藪柑子」(個人蔵)
http://www.dh-jac.net/db1/books/results.php?f3=%E5%85%B6%E7%8E%89%E7%94%BB%E8%AD%9C&enter=portal
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。