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酒井抱一筆「四季花鳥図屏風」周辺(七) [抱一・四季花鳥図屏風]

その七 「流水四季草花屏風」(東京国立博物館蔵)

流水四季花鳥図屏風・右隻.jpg

酒井抱一筆「流水四季草花図屏風」(二曲一双)「右隻」(東京国立博物館蔵)

流水四季花鳥図屏風・左隻.jpg

酒井抱一筆「流水四季草花図屏風」(二曲一双)「左隻」(東京国立博物館蔵)
【「流水四季草花図屏風」酒井抱一筆 二曲一双 紙本金地著色 
一六二・〇×一七二・〇(各隻) 落款「抱一筆」(右隻)「雨華抱一筆」(左隻)
印章「文詮」(朱文円印)(各隻)
 抱一が文化・文政期につくり出した草花図・花鳥図は、おりからの花卉園芸ブームと相俟って非常に好評だったようで、よく似た様式の様々なバリエーションの屏風、掛幅画が制作されている。これら大量の草花図をすべて抱一が自ら描いたとは考えられず、いわゆる工房制作の問題が浮上してくるのである。本図は、抱一の作品として、しばしば図録や展覧会などで紹介されるものであるが、先に掲げてきた「四季花鳥図」(陽明文庫)などの基準作例と比較してみた場合、色彩感覚と空間構成に大きな相違が見出されるようだ。たとえば、煩雑な草花の配置と野太い水流の動き、あくが強く洗練性に欠ける濃彩。抱一は鮮度の高い刺激的な色彩をピリッときかせるのに巧みであり、未整理のモチーフをきらうことが多い。裏面に鈴木守一(其一の長男、一八二三~八九)筆の「竹梅図」が描かれており、それと表の本図との筆者の関係は、今後の探求すべき課題のひとつであろう。】(『琳派一・花鳥一(紫紅社刊)』所収「作品解説(玉蟲敏子稿)」)

 この「流水花鳥図」は、上記の「作品解説」がなされた頃(一九八九年=平成元年初版)は、個人蔵であったが、現在は東京国立博物館蔵で、下記のアドレスなどで、その全容を閲覧することが出来る。

https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/E0033271

 上記の「作品解説」では、「これら大量の草花図をすべて抱一が自ら描いたとは考えられず、いわゆる工房制作の問題が浮上してくる」に関連して、「裏面に鈴木守一(其一の長男、一八二三~八九)筆の「竹梅図」が描かれており、それと表の本図との筆者の関係は、今後の探求すべき課題のひとつであろう」と、この「流水四季草花図屏風」は、落款は「抱一筆」「雨華抱一」であるが、「雨華庵工(画)房(抱一と其一を中心とする)」の、「其一色」の強い作品であるということを、言外に匂わせている感じでなくもない。
 そして、其一の後継者である守一が、その其一色の濃い抱一筆「流水四季草花図屏風」の裏面に、下記の「竹梅図」(二曲一双)を描いたということは、丁度、光琳の「風神雷神図屏風」(重要文化財・東京国立博物館蔵)の裏面に、抱一が「夏草秋草図屏風」を描いたと
同じように、守一にとっては大きな出来事であったろう。
 この守一の「竹梅図」は、光琳の代表作「紅白梅図屏風」(国宝・二曲一双・MOA美術館蔵)・「竹梅図屏風」(重要文化財・二曲一隻・東京国立博物館蔵)や抱一の「紅白梅図屏風」(六曲一双・出光美術館蔵)、そして、父であり師である其一の「雪中竹梅小禽図」(双幅・細見美術館蔵)や「梅椿図屏風」(六曲一双・ホノルル美術館蔵)などが、その背景になっているのかも知れない。

守一・竹梅一.jpg

鈴木守一筆「竹梅図屏風」(二曲一双)の「右隻第一扇」

守一・竹梅二.jpg

鈴木守一筆「竹梅図屏風」(二曲一双)の「右隻第二扇」

守一・竹梅図三.jpg

鈴木守一筆「竹梅図屏風」(二曲一双)の「左隻第一扇」

守一竹梅図四.jpg

鈴木守一筆「竹梅図屏風」(二曲一双)の「左隻第二扇」
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