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狩野永納筆「新三十六人歌合画帖」(その十五) [三十六歌仙]

その十五 殷富門院大輔と小侍従

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狩野永納筆「新三十六歌仙画帖(殷富門院大輔)」(東京国立博物館蔵)各22.4×19.0
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0056419

小侍従.jpg

狩野永納筆「新三十六歌仙画帖(小侍従)」(東京国立博物館蔵)各22.4×19.0
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0056420

左方十五・殷富門院大輔
http://www.ikm-art.jp/degitalmuseum/num/001/0010704000.html

 春かぜのかすみ吹とてたえまより/みだれてなびく青柳のいと

右方十五・小侍従
http://www.ikm-art.jp/degitalmuseum/num/001/0010705000.html

 いかなればその神山のあおいぐさ/としはふれども二葉なるらむ

(狩野探幽本)

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狩野探幽筆「新三十六歌仙画帖(左方十五・殷富門院大輔」(東京国立博物館蔵)各33.5×26.1
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0009408

小侍従.jpg

狩野探幽筆「新三十六歌仙画帖(右方十五・小侍従」(東京国立博物館蔵)各33.5×26.1
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0009426

(参考)

フェリス女学院大学蔵『新三十六歌仙画帖』

https://www.library.ferris.ac.jp/lib-sin36/sin36list.html

殷富門院大輔二.jpg

小侍従二.jpg

(周辺メモ)殷富門院大輔( いんぷもんいんのたいふ) 生没年未詳(1130頃-1200頃)

https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/i_taihu.html

藤原北家出身。三条右大臣定方の末裔。散位従五位下藤原信成の娘。母は菅原在良の娘。小侍従は母方の従姉にあたる。

「春風のかすみ吹きとくたえまより乱れてなびく青柳の糸」(新古73)
【通釈】春風が吹き、立ちこめた霞をほぐしてゆく。その絶え間から、風に乱れて靡く青柳の枝が見える。

「花もまたわかれん春は思ひ出でよ咲き散るたびの心づくしを」(新古143)
【通釈】桜の花も、私と死に別れた次の春は思い出してよ。咲いては散る、そのたびに私が心を使い果たしてきたことを。

「もらさばや思ふ心をさてのみはえぞ山しろの井手のしがらみ」(新古1089)
【通釈】ひそかに伝えたい、あの人を思うこの気持を。こうして堪え忍んでばかりは、とてもいられない。山城の井手のしがらみだって、水を漏らすではないか。

「あすしらぬ命をぞ思ふおのづからあらば逢ふよを待つにつけても」(新古1145)
【通釈】明日も知れない命のことを思ってしまう。生きていれば、ひょっとしたらあの人に逢う折もあるかもしれない――その時を期待するにつけても。

「何かいとふよもながらへじさのみやは憂きにたへたる命なるべき」(新古1228)
【通釈】なにをわざわざこの世を厭うことがあるだろう。万一にも生き永らえることなどできやしない。こんなふうにばかり、辛い思いに堪えていられる命のはずがあるまい。

「忘れなば生けらむものかと思ひしにそれも叶はぬこの世なりけり」(新古1296)
【通釈】あの人に忘れられ、見捨てられたなら、生きてなどいられるものか。――そう思っていたのに、死ぬことも叶わないこの世なのだ。

(周辺メモ)小侍従(こじじゅう) 生没年未詳(1121頃-1201以後) 

https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/matuyoi.html

紀氏。石清水八幡別当大僧都光清の娘。母は花園左大臣家小大進。藤原伊実の妻。法橋実賢・大宮左衛門佐の母。菅原在良は母方の祖父、殷富門院大輔は母方の従妹。四十歳頃に夫と死別し、二条天皇の下に出仕する。永万元年(1165)の天皇崩後、太皇太后多子に仕え、さらに高倉天皇に出仕した。

「いかなればそのかみ山の葵草年はふれども二葉なるらむ」(新古183)
【通釈】どういうわけだろう、その昔という名の神山の葵草は、賀茂の大神が降臨された時から、多くの年を経るのに、いま生えたばかりのように双葉のままなのは。

「かきくもりあまぎる雪のふる里をつもらぬさきに訪ふ人もがな」(新古678)
【通釈】空一面曇らせて雪の降る、古びた里にいる私を、この雪が積もらないうちに、誰か訪ねて来てほしいものだ。

「待つ宵のふけゆく鐘の声きけばあかぬ別れの鳥はものかは」(新古1191)
【通釈】恋人を待つ宵の更けゆくことを知らせる鐘の音を聞けば、嫌々別れなければならない朝を告げる鳥の声も物の数に入るだろうか。この鐘の音の辛さに比べれば。

「つらきをも恨みぬ我にならふなよ憂き身を知らぬ人もこそあれ」(新古1227)
【通釈】あなたの冷淡さを恨まない私が普通だと思わない方がよい。身の上をわきまえない人も、世の中にはいるのだから。私は辛い境遇に生まれついた身だから我慢するけれど、ほかの女の人はそうはゆきませんよ。

「しきみ摘む山路の露にぬれにけり暁おきの墨染の袖」(新古1666)
【通釈】仏にお供えしようと山で樒(しきみ)の花を摘んでいると、路傍の草の露に濡れてしまった。暁に起き出て来た、私の墨染の袖が。

「色にのみ染めし心のくやしきをむなしと説ける法(のり)のうれしさ」(新古1936)
【通釈】現世の浮わついたことにばかり心を染めていたことが後悔されるけれど、「色即是空」と説く般若心経の教えに出会えて心の迷いも消えた。ああうれしい。
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