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江戸の「金」と「銀」の空間(その十) [金と銀の空間]

(その十)光琳の「金と銀」(「白楽天屏風図」)

白楽天図屏風一.jpg

尾形光琳筆「白楽天図屏風」 紙本金地着色 六曲一隻 個人蔵
一四八・〇×三六一・〇cm → A図
【 白楽天と住吉明神が問答する謡曲「白楽天」を題材とする。向かって右の唐船に乗る のが白楽天。左の小舟上の老人が住吉明神。室町時代の大和絵屏風に出てきそうな古風な山の造形と、唐船の大胆な構図とのバランスが面白い。同工異曲の作品が他にもう一点ある。 】(『もっと知りたい尾形光琳(仲町啓子著)』)

 この「作品解説」の「同工異曲の作品が他にもう一点ある」というのは、次の「根津美術館蔵」作品(B図)のことであろう。

白楽天図屏風二.jpg

尾形光琳筆「白楽天図屏風」 紙本金地着色 六曲一双 根津美術館蔵
一五四・〇×三六二・〇cm  → B図

 ここで、上記の「個人蔵」作品(A図)と「根津美術館蔵」作品(B図)との、「浪」などに関する表現の違いについて触れて置きたい。

一 「個人蔵」作品(A図)の波は、「浪」というよりも「山」という感じで、本来のものは、「根津美術館蔵」作品(B図)の「浪」のように、「銀泥・胡粉・群青」などが施されていて、その「銀泥」などは、酸化して「黒変」しているような印象を受ける。
 この「銀(泥)」の酸化による「黒変」は、「松島図屏風」(大英博物館蔵)の「白い波濤」の「黒変」と酷似している(「その九」の「C図」)。

二 「根津美術館蔵」作品(B図)の波は、上部の金箔・金砂子の「金雲」、左辺の緑青の「土坡」と調和して、墨線・胡粉(白)・銀泥・群青などで「波」を表現し、特段に、この「波」の異様さは見られない。しかし、波の背の銀(泥)などは、制作時のものに比すると酸化(黒変化)は免れないのであろう。

 なお、下記のアドレスで、光琳の波濤図関連のものは、北斎の「神奈川沖浪裏」(横大判錦絵)などに大きな影響を与えているのだろうということについて触れたが、今回の「白楽天図屏風」との関連で、その「船」の傾きなども、やはり、光琳の影響というものが垣間見えてくる。

http://yahan.blog.so-net.ne.jp/2018-04-30

神奈川沖浪裏.jpg
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