華庵の四季(その八) [雨華庵の四季]
その八「夏(三)」
酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「夏(三)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035819
この絵図の右側は、前回の続きの「芍薬と黒揚羽」の図柄である。前回までの白と赤の芍薬の花の、その赤い花の頭上の揚羽蝶に見合うように、二つの蕾を左上がりの対角線上に描き、それが左端の流水の曲線と結びつくような空間処理を構成している。
その中央の下部に、「黄色い河骨の花と大きな特徴のある二枚の葉、その二枚の緑葉の中央に、その葉と同じ位の大きさの黒褐色の鷭(ばん)」が描かれている。そして、その左側には、「琳派」の象徴的な花の「燕子花(かきつばた)」が描かれ、その上部には、これまた「琳派」の象徴的な「流水(水紋)」の一部が描かれている。
(同上:部分拡大図)
河骨(仲夏・「こうほね・かうほね・かはほね」)「水のきれいな沼、池、川などの浅い所に自生する。太く白い根が白骨のように見える。六~七月頃水中から花茎をのばし、水面上に黄色い花をつける。葉はさといもの葉に似ている。」
河骨の終にひらかぬ花盛り 素堂 「いつを昔」
河骨の二もとさくや雨の中 蕪村 「蕪村句集」
河骨の金鈴ふるふ流れかな 茅舎 「華厳」
鷭(三夏・「大鷭・小鷭・誰首鶏=ばんしゅけい)「草深い水辺に繁殖する夏鳥。全体が黒褐色で額から嘴にかけて赤い。嘴の先端は黄色で脚が長い。大鷭は嘴と額板が白い。小鷭は額板と嘴の基部が赤い。上図は小鷭のようである。」
雨催ひ鷭の翅に猶暗し 嘯山 「葎亭句集」
舟ゆけば蒲(かば)綾なすや鷭のこゑ 波郷 「鶴」
燕子花(仲夏・)「尾形光琳の『燕子花図屏風』に描かれている水辺の花。剣のような葉と紫の花で一目でこの花と分かる。『燕子花』字は花の姿が燕の姿を思わせるところからきている。」
杜若語るも旅のひとつ哉 芭蕉 「笈の小文」
杜若われに発句の思ひあり 芭蕉 「千鳥掛」
有難きすがた拝まんかきつばた 芭蕉 「泊船集」
杜若にたりやにたり水の影 芭蕉 「続山の井」
朝々の葉の働きや燕子花 去来 「俳諧古選」
宵々の雨に音なし杜若 蕪村 「蕪村句集」
『十二か月花鳥図(抱一筆)』五月「燕子花に鷭図」(「宮内庁三の丸尚蔵館蔵=宮内庁本」)
『十二か月花鳥図(抱一筆)』五月「燕子花・河骨・鴨図」(「出光美術館蔵=出光本」)
抱一の画業の最期を飾るものは、十二ケ月に因む花と鳥を組み合わせた「十二か月花鳥図」の連作である。それらは、「宮内庁三の丸尚蔵館蔵=宮内庁本、出光美術館蔵=出光本、畠山記念館本、香雪美術館本、ブライス・コレクション本・ファインバーグ・コレクション本」などを目にすることが出来る。それらの根底を為すものが、この「四季花鳥図巻」のように解せられる。
酒井抱一筆『四季花鳥図巻(上=春夏・下=秋冬)』「夏(三)」東京国立博物館蔵
https://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0035819
この絵図の右側は、前回の続きの「芍薬と黒揚羽」の図柄である。前回までの白と赤の芍薬の花の、その赤い花の頭上の揚羽蝶に見合うように、二つの蕾を左上がりの対角線上に描き、それが左端の流水の曲線と結びつくような空間処理を構成している。
その中央の下部に、「黄色い河骨の花と大きな特徴のある二枚の葉、その二枚の緑葉の中央に、その葉と同じ位の大きさの黒褐色の鷭(ばん)」が描かれている。そして、その左側には、「琳派」の象徴的な花の「燕子花(かきつばた)」が描かれ、その上部には、これまた「琳派」の象徴的な「流水(水紋)」の一部が描かれている。
(同上:部分拡大図)
河骨(仲夏・「こうほね・かうほね・かはほね」)「水のきれいな沼、池、川などの浅い所に自生する。太く白い根が白骨のように見える。六~七月頃水中から花茎をのばし、水面上に黄色い花をつける。葉はさといもの葉に似ている。」
河骨の終にひらかぬ花盛り 素堂 「いつを昔」
河骨の二もとさくや雨の中 蕪村 「蕪村句集」
河骨の金鈴ふるふ流れかな 茅舎 「華厳」
鷭(三夏・「大鷭・小鷭・誰首鶏=ばんしゅけい)「草深い水辺に繁殖する夏鳥。全体が黒褐色で額から嘴にかけて赤い。嘴の先端は黄色で脚が長い。大鷭は嘴と額板が白い。小鷭は額板と嘴の基部が赤い。上図は小鷭のようである。」
雨催ひ鷭の翅に猶暗し 嘯山 「葎亭句集」
舟ゆけば蒲(かば)綾なすや鷭のこゑ 波郷 「鶴」
燕子花(仲夏・)「尾形光琳の『燕子花図屏風』に描かれている水辺の花。剣のような葉と紫の花で一目でこの花と分かる。『燕子花』字は花の姿が燕の姿を思わせるところからきている。」
杜若語るも旅のひとつ哉 芭蕉 「笈の小文」
杜若われに発句の思ひあり 芭蕉 「千鳥掛」
有難きすがた拝まんかきつばた 芭蕉 「泊船集」
杜若にたりやにたり水の影 芭蕉 「続山の井」
朝々の葉の働きや燕子花 去来 「俳諧古選」
宵々の雨に音なし杜若 蕪村 「蕪村句集」
『十二か月花鳥図(抱一筆)』五月「燕子花に鷭図」(「宮内庁三の丸尚蔵館蔵=宮内庁本」)
『十二か月花鳥図(抱一筆)』五月「燕子花・河骨・鴨図」(「出光美術館蔵=出光本」)
抱一の画業の最期を飾るものは、十二ケ月に因む花と鳥を組み合わせた「十二か月花鳥図」の連作である。それらは、「宮内庁三の丸尚蔵館蔵=宮内庁本、出光美術館蔵=出光本、畠山記念館本、香雪美術館本、ブライス・コレクション本・ファインバーグ・コレクション本」などを目にすることが出来る。それらの根底を為すものが、この「四季花鳥図巻」のように解せられる。