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応挙工房周辺(大乗寺(その六 梅花狗子図)) [応挙]

その八 大乗寺(その六 梅花狗子図)

狗子図.jpg

山本礼筆「梅花狗子図」(「狗子の間」襖十一枚の内の二枚)紙本淡彩(大乗寺)

【 梅花狗子図 山本守礼筆 
満開の梅の木の下でこの春生まれたばかりの子犬たちが、無邪気にじゃれ合う姿が描かれているが、子犬は応挙が好んだモチーフで、弟子達もそれを継承した。狩野派などでは、松や鷹、鶴、龍虎のような、日常的でないモチーフを扱うことが多かったのに対し、応挙は日常の生活で見慣れている物に対し慈愛の視線を送り、自然界の生きとして生けるもの全てが美しく、絵のモチーフになりうるものという考え方を持っていた。従来、絵のモチーフとして扱われることがほとんどなかった子犬が、応挙以降円山四条派の特色を担うモチーフの一つとなり、守礼も応挙の筆致で愛くるしい子犬の表情を巧みに表現している。】
(『大乗寺(佐々木丞平・正子編著)』所収「狗子の間」)

守礼は、宝暦元年(一七五一)の生まれ、寛政二年(一七九〇)に没している。すなわち、天明七年(一七八七)に、この「梅花狗子図」を制作して、二年足らずで、四十歳足らずの生涯を閉じている。
 本姓は藤原、旧姓は亀岡。諱は守貞、のち守礼。通称は数馬、主水。字は子敬、号を久珂、探芳斎、猶亭。山本家は京都で代々狩野探幽の流れをくむ画系で、守礼はその六代目にあたり、守礼の代で円山派に転向したともいわれている。
 守礼は、弟の亀岡規礼との合作で、「使者の間」の「少年行図(守礼筆)」「採蓮図(規礼筆)」も描いているが、これも、「狗子の間」と同じく、天明七年(一七八七)の第一期(前期)には完成していて、一緒に大乗寺に納入されていたのであろう。

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山本守礼筆「山水人物図」(「天袋・小襖四面の内)(上部「欄間」は「松に岩図・応挙筆)
「東京国立博物館・応挙館」→A図

守礼一.jpg

A図の一部(拡大)

杉戸狗子図.jpg

円山応挙筆「朝顔狗子図杉戸絵」二面 板地着色 各一六六・五×八一・三cm
「東京国立博物館・応挙館」→B図

上記は「東京国立博物館・応挙館」の障壁画の一部である。この応挙館は、元々は、尾張国(現在の愛知県大治町)の天台宗寺院、明眼院のもので、天明四年(一七八四)に、応挙が眼病で明眼院に療養していた際のお礼として揮毫したといわれている。
 この応挙館は、茶人「鈍翁」として名高い旧三井物産の創業者・益田孝が、品川の邸宅で茶室として使用していたが、昭和八年(一九三三)に東京国立博物館(台東区上野)に寄贈され、同館庭園に移築されたものである。
 その障壁画は、「梅図襖」(四面)、「松に岩図」(「床・壁貼付七面)、「竹図」(壁貼付二面)、「芦雁図」(襖十面)などで、上記のA図は、応挙筆「松に岩図」(「床・壁貼付七面)と一体となっている、山本守礼筆の「山水人物図」(「小袋・天袋四面の内)である。
 この天明四年(一七八四)は、応挙、五十二歳、守礼が三十三歳の時で、いわゆる、応挙が、多くの門弟を抱え工房を形成し、多くの障壁画を制作した、そのスタート時点での、応挙・守礼の師弟コンビでの、今に伝わっている遺作ともいえるものであろう。
 この時の、応挙の杉戸絵が、B図の「朝顔狗子図杉戸絵」で、これは、応挙の「動物画」(鶴・孔雀・兎・虎・子犬など)の、応挙風「子犬」のモデル画の一つとされているものである。
 その上で、冒頭の守礼の、大乗寺「狗の間」の「梅花狗子図」を見ると、これは、紛れもなく、この「狗子」は、応挙の「朝顔狗子図杉戸絵」(B図)の「狗子」、そして、その「梅図(樹)」も、これまた、応挙の「梅図襖」をモデルにしていることが一目瞭然となって来る。
 すなわち、「応挙工房の活動」と、その活動のピークとなる、数々の「応挙(応挙工房)障壁画」の、その原動力になったのは、三十代の山本守礼と、そして、二十代の応挙の嫡子・円山応瑞の二人であったのであろう。

補記一 応挙館のデジタルアーカイブ関連

http://www.dnp.co.jp/denshoubi/works/fusuma/t01.html

補記二 大乗寺のデジタルアーカイブ関連

http://www.dnp.co.jp/denshoubi/works/fusuma/d02.html

補記三 「応挙関係資料」(『大乗寺(佐々木丞平・正子編著)』所収)「呉春・嶋田元直・山本守礼・秀雪亭・円山応瑞の画料等の文書」→B図 ・・・・「守礼」の部分拡大

守礼文書.jpg

御襖二間分少年行/梅狗子両図相認メ候拙/画資方 金千百疋御恵/投忝ク拝納仕リ候 以上

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