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夏目漱石の「俳句と書画」(その四) [「子規と漱石」の世界]

その四 「夏目漱石・子規宛書簡/明治24(1891.7.9)」周辺

夏目漱石・子規宛書簡一.jpg

「夏目漱石・子規宛書簡/明治24(1891.7.9)」(「夏目漱石デジタルコレクション」)
https://www.kanabun.or.jp/souseki/list.html

夏目漱石・子規宛書簡三.jpg

夏目漱石・子規宛書簡二.jpg


38 鳴くならば満月になけほととぎす (漱石・26歳「明治25年(1892)」)
≪ 季=時鳥(夏)。※落第した子規に、退学しようなどという気を起さず卒業することをすすめる句。◇書簡(正岡子規宛、明治25.7.19) ≫(『漱石全集第十七巻・坪内稔典注解』)

39 病む人の巨燵離れて雪見かな (漱石・26歳「明治25年(1892)」)
≪ 季=雪見(冬)。※巨燵は炬燵に同じ。子規からの書簡で、講師として出講している
東京専門学校での漱石の評判がよくないと知らされ、その返書に記した句。漱石は「生徒が生徒なれば辞職勧告を受けてもあながち小生の名誉に関するとは思はねど学校の委託を受けながら生徒を満足せしめ能はずと有ては責任の上又良心の上より云ふも心よからずと存候間此際断然と出講を断はる決心に御座候/(巨燵から追ひ出れたる)は御免蒙りたし」と書き、この句を記している。(中略) ◇書簡(正岡子規宛、明治25.12.14) ≫(同上)

夏目漱石短冊一.jpg

「夏目漱石短冊『君を苦しむるは詩魔か病魔かはた情魔か/花に酔ふ事を許さぬ物思ひ』」
(注記・寒川鼠骨函書:「明治廿四年子規居士病む漱石慰問の尺牘に此短冊を添へて贈れり」) (「夏目漱石デジタルコレクション」)
https://www.kanabun.or.jp/souseki/list.html

   君を苦しむるは詩魔か病魔かはた情魔か/寄子規
52 花に酔ふ事を許さぬ物思ひ (漱石・28歳「明治27年(1894)」)
≪ 季=花(春)。 ◇全集(大6)に明治二十七年頃として収める。(上記の「夏目漱石デジタルコレクション」では、寒川鼠骨函書により[1891(明治24).3-4]としている。)≫(『漱石全集第十七巻・坪内稔典注解』)


(追記)夏目漱石俳句集(その一)<制作年順> 明治22年~明治27年(1~52)

https://sosekihaikushu.seesaa.net/article/200911article_3.html

明治22年(1889年)

1 帰ろふと泣かずに笑へ時鳥
2 聞かふとて誰も待たぬに時鳥

明治23年(1890年)

3 西行も笠ぬいで見る富士の山
4 寐てくらす人もありけり夢の世に
5 峰の雲落ちて筧に水の音
6 東風吹くや山一ぱいの雲の影
7 白雲や山又山を這ひ回り

明治24年(1891年)

8 馬の背で船漕ぎ出すや春の旅
9 行燈にいろはかきけり秋の旅
10 親を持つ子のしたくなき秋の旅
11 さみだれに持ちあつかふや蛇目傘
12 見るうちは吾も仏の心かな
13 蛍狩われを小川に落しけり
14 藪陰に涼んで蚊にぞ喰はれける
15 世をすてゝ太古に似たり市の内
16 雀来て障子にうごく花の影
17 秋さびて霜に落けり柿一つ
18 吾恋は闇夜に似たる月夜かな
19 柿の葉や一つ一つに月の影
20 涼しさや昼寐の夢に蝉の声
21 あつ苦し昼寐の夢に蝉の声
22 とぶ蛍柳の枝で一休み
23 朝貌に好かれそうなる竹垣根
24 秋風と共に生へしか初白髪
25 朝貌や咲た許りの命哉
26 細眉を落す間もなく此世をば
27 人生を廿五年に縮めけり
28 君逝きて浮世に花はなかりけり
29 仮位牌焚く線香に黒む迄
30 こうろげの飛ぶや木魚の声の下
31 通夜僧の経の絶間やきりぎりす
32 骸骨や是も美人のなれの果
33 何事ぞ手向し花に狂ふ蝶
34 鏡台の主の行衛や塵埃
35 ますら男に染模様あるかたみかな
36 聖人の生れ代りか桐の花
37 今日よりは誰に見立ん秋の月

明治25年(1892年)

38 鳴くならば満月になけほとゝぎす
39 病む人の巨燵離れて雪見かな

明治27年(1894年)

40 何となう死に来た世の惜まるゝ
41 春雨や柳の中を濡れて行く
42 大弓やひらりひらりと梅の花
43 矢響の只聞ゆなり梅の中
44 弦音にほたりと落る椿かな
45 弦音になれて来て鳴く小鳥かな
46 春雨や寐ながら横に梅を見る
47 烏帽子着て渡る禰宜あり春の川
48 小柄杓や蝶を追ひ追ひ子順礼
49 菜の花の中に小川のうねりかな
50 風に乗って軽くのし行く燕かな
51 尼寺に有髪の僧を尋ね来よ
52 花に酔ふ事を許さぬ物思ひ
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