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川原慶賀の世界(その十七) [川原慶賀の世界]

(その十七)「川原慶賀の長崎歳時記(その九)月見」周辺

月見宴(A図) .jpg

●作品名:月見宴(A図) 「ブロムホフ・コレクション」
●Title:Full-moom Viewing, September
●分類/classification:年中行事、9月/Annual events
●形状・形態/form:絹本彩色、めくり/painting on silk, sheet
●所蔵館:ライデン国立民族学博物館 National Museum of Ethnology, Leide
http://www.nmhc.jp/keiga01/kawaharasite//target/kgdetail.php?id=4&cfcid=142&search_div=kglist
(『鎖国の窓を開く:出島絵師 川原慶賀展(西武美術館)』所収「出品目録№25」)
絹本著色 26.5×38.0

月見(B図) .jpg

●作品名:月見(B図) 「フイッセル・コレクション」
●Title:Full-moom Viewing, September
●分類/classification:年中行事、9月/Annual events
●形状・形態/form:絹本彩色、めくり/painting on silk, sheet
●所蔵館:ライデン国立民族学博物館 National Museum of Ethnology, Leiden
http://www.nmhc.jp/keiga01/kawaharasite//target/kgdetail.php?id=4&cfcid=142&search_div=kglist
(『鎖国の窓を開く:出島絵師 川原慶賀展(西武美術館)』所収「出品目録№10」)
(『川原慶賀展―幕末の『日本』を伝えるシーボルトの絵師(「出品目録№17」)』)
絹本着色 33.4×47.2

月見(C図).jpg

●作品名:月見(C図) 「シーボルト・コレクション」
●Title:Full-moom Viewing, September
●分類/classification:年中行事、9月/Annual events
●形状・形態/form:絹本彩色、めくり/painting on silk, sheet
●所蔵館:ライデン国立民族学博物館 National Museum of Ethnology, Leiden
http://www.nmhc.jp/keiga01/kawaharasite//target/kgdetail.php?id=4&cfcid=142&search_div=kglist
(『川原慶賀展―幕末の『日本』を伝えるシーボルトの絵師(「出品目録№18」)』)
絹本著色 26.5×36.0

 「ブロムホフ・コレクション」の「月見宴」(A図)は、これまでの「同コレクション」の「凧揚げ」「雛祭り」「花祭り」「陸(おか)ペーロン」「供琴・乞巧奠」「秋祭り(長崎くんち)」の、その一連の作品で、「川原慶賀」作ということになる。
 一つ気掛かりのことは、この作品は「絹本彩色・絹本著色」としているのだが、その他の作品は「紙本著色」で、この作品も、「紙本著色」の「まくり(めくり)=未表装の作品」ものなのかも知れない。
 次の「フイッセル・コレクション」の「月見」(B図)については、これまでの「同コレクション」の「花見」「井戸更え」「面浮立」の、その一連の作品で、この一連のものには、
印章(朱文方印「慶賀」)が捺されている。これらの一連の作品は「川原慶賀」作で、これらの作品は、「川原慶賀」作かどうかを見極める上での、一つの指標となる作品群ということになろう。

「花見・月見・雪見の朱文方印『慶賀』」.png

「花見・月見・雪見の朱文方印『慶賀』」(「フイッセル・コレクション」)(D図)

 ここで、「シーボルト・コレクション」の「月見」(C図)については、上記の「フイッセル・コレクション」の「花見・月見・雪見の朱文方印『慶賀』」(D図)の、その印章の捺されている下部右端の、その「花見(団扇を仰いでいる下僕)・月見(料理を運んでいる女性)・雪見(雪見する男と従者)」などと比較すると、やや異質な印象(同一人の作ではない?)を受けるのである。
 これらの、「ブロムホフ・コレクション」、「フイッセル・コレクション」そして「シーボルト・コレクション」の「長崎歳時記」(長崎年中行事)の作品群は、丁度、先に紹介した、下記アドレスの、別連作(シリーズ)の「人の一生」に関する、「ブロムホフ・コレクション」、「フイッセル・コレクション」そして「シーボルト・コレクション」の、それらの相互検証と同じような考証が要請されるような印象を深くする。
 これらのことに関して、下記アドレスに関して、その(参考)データを再掲して置きたい。

(参考)『「出島絵師」川原慶賀による《人の一生》の制作―野藤妙・宮崎克則(西南学院大学国際文化学部)』(九州大学総合研究博物館研究報告 Bull. Kyushu Univ. MuseumNo. 12, 1-20, 2014)所収「巻末図《人の一生》①(フィッセル・コレクション、その(1)のみシーボルト・コレクション、ライデン国立民族学博物館所蔵)」周辺

https://yahan.blog.ss-blog.jp/2022-09-12

(再掲)

プロムホフ・シーボルトコレクション《人の一生》「誕生」.png

左図:プロムホフ・コレクション≪人の一生≫「誕生」(「人の一生画巻」・川原慶賀筆)
右図:シーボルト・コレクション≪人の一生≫「誕生」(シーボルトコレクションの《人の一生》は唯一23場面が全て揃っている。そのトップの場面。但し、「慶賀」の落款無。「川原慶賀筆?」)

フイッセル・シーボルトコレクション《人の一生》「寺院での葬式」.png

左図:フイッセル・コレクション≪人の一生≫「寺院での葬式」(「慶賀」の落款有。「川原慶賀筆」。23場面のうち「誕生」が欠落している。)
右図:シーボルト・コレクション≪人の一生≫「葬列の迎え」(シーボルトコレクションの《人の一生》23場面の22番目の場面。「慶賀」の落款無。「川原慶賀筆?」)

 上記の「左図」(プロムホフ・コレクション≪人の一生≫「誕生」)と「右図」(シーボルト・コレクション≪人の一生≫「誕生」)とを比較して鑑賞すると、「左図」は「着帯」の場面で、「右図」は「産湯と着帯」との場面で、これは、左の家では「産湯」、そして、隣の右の家では「着帯」の場面と、そのアレンジの妙が伝わってくる。
 次の「左図」(フイッセル・コレクション≪人の一生≫「寺院での葬式」)に対して、「右図」(シーボルト・コレクション≪人の一生≫「葬列の迎え」)の場面で、同じ、寺院のスナップなのだが、この「右図」の、中央の「位牌」の「戒名」が「酔酒玄吐……居士」などと書いてあり、「慶賀(慶賀工房)」の「洒落・遊びの精神」が随所に見受けられる(『川原慶賀展―幕末の『日本』を伝えるシーボルトの絵師(「主要作品解説」)』・西武美術館刊)とか、この種の≪人の一生≫ものでは、下記の「④シーボルト・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》④)→「慶賀」の落款無」が、一番妙味があるような趣である。

 ここで、「川原慶賀・川原慶賀工房」作とされている「人の一生」と題するシリーズものは、「プロムホフ・フイッセル・シーボルト」の各コレクションが、ライデン国立民族学博物館所蔵となっている。
 そして、『「出島絵師」川原慶賀による《人の一生》の制作―野藤妙・宮崎克則(西南学院大学国際文化学部)』(九州大学総合研究博物館研究報告 Bull. Kyushu Univ. MuseumNo. 12, 1-20, 2014)では、さらに、「フイッセル・コレクション」は全部で三種類、蒐集者不明のもの一種類で、合計して六種類(プロムホフ・コレクションは「画巻」、その他「めくり」)のものを取り上げ(プロムホフ・コレクションの「画巻」は補足)、下記の「①フィッセル・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》①)→「慶賀」の落款有」のみ、「川原慶賀筆」としている。そして、補足的に「プロムホフ・コレクションの『画巻』」を取り上げ、これも「川原慶賀筆」としている。
 その上で、唯一23場面が全て揃っている「④シーボルト・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》④)→「慶賀」の落款無」と「①フィッセル・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》①)→「慶賀」の落款有」とを基準として、「人の一生」シリーズの全場面について、詳細な論及をしている。

①フィッセル・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》①)→「慶賀」の落款有
②フィッセル・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》②)→「慶賀」の落款無
③フィッセル・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》③)→「慶賀」の落款無
④シーボルト・コレクション《人の一生》(以下、《人の一生》④)→「慶賀」の落款無
⑤収集者不明《人の一生》(以下、《人の一生》⑤)→「慶賀」の落款無

(以下、略)
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