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「洛東遺芳館」と「江戸中・後期の京師の画人たち」(その二「円満院祐常」) [洛東遺芳館]

(二)円満院祐常筆「冨士」

円満院祐常.jpg

円満院祐常筆「冨士」((洛東遺芳館蔵))

http://www.kuroeya.com/05rakutou/index-2013.html

祐常(ゆうじょう)は二条家(にじょうけ)の出身で、大津(おおつ)の円満院(えんまんいん)の門主を務めました。円満院の祐常のもとには、円山応挙(まるやまおうきょ)が出入りしていたこと知られていますが、 祐常も瀟洒な作品を残しています。展示した作品は、輪郭線は使わず、薄墨だけで富士を表わしています。賛の和歌「たちのぼる、雲も およばぬ、ふじのねに、けぶりをこめて、かすむ春かな」は九条尚実(くじょうひさざね)の書ですが、絵とピッタリと意気が合っています。

 応挙の前半生に影響を与えた人物の筆頭格は、円満院祐常であろう。祐常は五摂家の一つの二条家の生まれ、実父は右大臣の吉忠である。十二歳で得度して門跡寺院である円満院に入り、後に大僧正に任じられている。
 祐常は、一七六一年から一七七三年まで日常の諸事万端を『萬誌(ばんし)』という書物に残している。そこに、応挙の名が出てくるのは、六五年(明和二年)、三十三歳の時からである。祐常自身、絵の心得があったが、応挙のパトロンであると同時に、応挙門で応挙に絵の指導を仰いでいたのであろう。
 この二人の関係から生まれた代表的な作品が、「七難七福図巻」(「天災巻」「人災巻」「福寿巻」相国寺蔵)で、「天災巻」は、三二・二×一五九〇・八(約一六m)、「人災巻」は、三二・〇×一〇六一・八(約一一m)、「福寿巻」は、三二・二×一二〇八・〇(訳一二m)と、空前絶後の長大横長の図巻である。
 祐常は、応挙に、祐常自身が描いた下絵を示しながら、「何年かかっても良いから応挙自身が見聞き、体験し、そして、目のあたりにしたものをリアルに描いて欲しい」と懇請し、それに応えた応挙は、明和二年(一七六五)から明和五年(一七六八)の、足掛け四年の歳月をかけて、この作品を完成したという。
 この明和二年(一七六五)、応挙、三十三歳から、明和五年(一七六八)の、応挙、三十六歳に掛けての、この「七難七福図巻」に関わる、応挙の真摯な「見聞・体験・実写・模写」等々の、その「創意(計画)・実践(試行)・確認(相互評価)」の繰り返しが、その後の、「応挙・円山派・円山四条派」の礎になったことは、応挙の、その作品の、その前半生と後半生とを分けて、つぶさに鑑賞するならば、自ずから了知されるものであろう。

補記一 洛東遺芳館について

http://www.kuroeya.com/05rakutou/index.html

補記二 萬野美術館と相国寺承天閣美術館など

http://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10715.html

補記三 「江戸中・後期の京都の画人たち」など

http://yahan.blog.so-net.ne.jp/2017-05-29

諸家寄合膳(二十枚)

一 円山応挙(一七三三~九五)筆「折枝図」
二 池大雅(一七二三~七六)筆「梅図」     
三 与謝蕪村(一七一六~一七八三)筆「翁自画賛」
四 池玉瀾(一七二八~八四)筆「松渓瀑布図」
五 鼎春嶽(一七六六~一八一一)筆、皆川淇園賛「煎茶図」
六 曽我蕭白(一七三〇~八一)筆「水仙に鼠図画賛」
七 東東洋(一七五五~一八三九)筆、八木巽処賛
八 伊藤若冲(一七一六~一八〇〇)筆、四方真顔賛「雀鳴子図」
九 福原五岳(一七三〇~一七九九)筆、三宅嘯山賛「夏山図」
十 狩野惟信(一七五三~一八〇八)筆、鴨祐為賛「富士図」
十一 岸駒(一七四九《五六》~一八三八)筆、森川竹窓賛「寒山拾得図」
十二 長沢芦雪(一七五四~一七九九)筆、柴野栗山賛「薔薇小禽図」
十三 月僊(一七四一~一八〇九)筆、慈周(六如)賛「五老図」
十四 吉村蘭洲(一七三九~一八一七)筆、浜田杏堂賛「山居図」
十五 土方稲嶺(一七三五~一八〇七)筆、木村蒹葭堂賛「葡萄図」
十六 玉潾(一七五一~一八一四)筆、慈延賛「墨竹図」
十七 紀楳亭(一七三四~一八一〇)筆、加茂季鷹賛「蟹図」
十八 観嵩月(一七五九~一八三〇)筆「鴨図」
十九 島田元直(一七三六~一八一九)筆、谷口鶏口賛「菊図」
二十 堀索道(?~一八〇二)筆、大島完来賛「牡丹図」

諸家寄合椀(十一合)

一 呉春(一七五二~一八一一)筆「燕子花郭公図」
二 高嵩谷(一七三〇~一八〇四)筆「山水図」  
三 伊藤若冲(一七一六~一八〇〇)筆「梅図」
四 英一峰(一六九一~一七六〇)筆「芦雁図」
五 黄(横山)崋山(一七八一~一八三七)筆「柳図」
六 土佐光貞(一七三八~一八〇六)筆「稚松」
七 村上東洲(?~一八二〇)筆「三亀図」
八 鶴沢探泉(?~一八〇九)筆「三鶴図」
九 森周峯(一七三八~一八二三)筆「水仙図」
十 宋紫山(一七三三~一八〇五)筆「竹図」
十一 森狙仙(一七四七~一八二一)筆「栗に猿図」


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