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本阿弥光悦筆「千載集『序』和歌巻」 [光悦・宗達・素庵]

その一 「大和とみこと(御言)の歌は―」

(桃山時代 17c 紙本雲母摺絵墨書 H-24.9 W-1459.7 所蔵 MIHO MUSEUM 猪原家旧蔵) (以下の※「校注」などは『新日本古典文学大系10 千載和歌集』などを参考)
http://www.miho.or.jp/booth/html/artcon/00002693.htm

その一 「大和とみこと(御言)の歌は……」

(1-1)

序1-1.jpg

やまと
みこと(御言)の
歌は、
ちはや
ぶる神代
より
はじまりて、
なら(楢)のは(葉)の
名にお(を)ふ
(みや(宮)にひろまれり、)

※大和とみこと(御言)の歌→やまと歌は→「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」(「古今・仮名序」)→「古来風躰抄」
※なら(楢)のは(葉)の名にお(を)ふみや(宮)=聖武天皇?→「古来風躰抄」

(1-2)

序1-2.jpg

(なら(楢)のは(葉)の名にお(を)ふみや(宮)にひろまれり、)
たましき(玉敷き)

たひら(平)の
みやこ(都)にし
ては、

※たましき(玉敷き)のたひら(平)のみやこ(都)=平安京

(1-3)

序1-3.jpg

延喜のひじり
の御世には
古今集を
えらばれ、
天暦のかし
こき
おほむとき(御時)には、
(後撰集をあつめたまひ、)

※延喜のひじり=醍醐天皇 
※天暦のかしこきおほむとき(御時)=村上天皇

(1-4)

序1-4.jpg

後撰集をあつ

たまひ、
白河のおほんよ(御世)には
後拾遺を
勅せしめ、
堀川の先帝は
ももち(百千)の
(うたをたてまつらしめたまへり。)

※白河のおほんよ(御世)=白河天皇  
※堀川の先帝=堀河天皇 
※ももち(百千)の(うた=百首和歌


(「追記メモ」その一)

一 本阿弥光悦愛蔵から「本阿弥切(ほんあみぎれ)」と呼ばれる「伝小野道風筆《古今集》断簡の古筆切〈本阿弥切〉」がある。

【小野道風が書写したと伝えられる『古今和歌集』の断簡で,平安古筆の一つ。本阿弥光悦が愛蔵したのでこの名がある。藍,白,枯れ葉色の唐紙 (からかみ) を用い,巻子または断簡として宮内庁三の丸尚蔵館,あるいは京都国立博物館その他諸家に分蔵。書は『寸松庵色紙』に類似し,円転自由のうちに骨力があり,高い品位をそなえる。】(ブリタニカ国際大百科事典)

二 三色紙と『寸松庵色紙』

https://www.syodou.net/column/kanamorekishi/

【「三色紙」とは、平安時代の古筆の中で、散らし書き、布置の見事さなどから、継色紙、寸松庵色紙、桝色紙を指しています。

継色紙(つぎしきし)
万葉集、古今和歌集、その他未評の集から四季、恋などの歌を抜粋し書写したものの断簡。
もとは粘葉装の冊子で、料紙二枚に継き書きしている為にこの名で呼ばれます。料紙は鳥の子の染紙。小野道風筆と伝えられ、十世紀後半の書写と推定されます。字形は古体で、女手に草を混用し、洗練度が高く古筆中の名作と言われます。

寸松庵色紙(すんしょうあんしきし)
古今和歌集の四季の部分の抄写。てもとは粘葉装の冊子本です。舶来の美麗な料紙(12~13センチ四方)を用い、十一世紀後半の書写とと思われます。散らし方は、行頭に高低変化のあるもの、一首を左右上下に分けたもの、終行を一字で収めたものなど、変化に富んでいます。茶人の佐久間将監真勝がこの色紙十二枚を愛玩し、茶室・寸松庵に秘蔵していたことにちなんで、一連の色紙がこの名で呼ばれています。

桝色紙(ますじきし)
清原深養文の家集を書写したもので、もとは冊子本、藤原行成筆と伝えられます。白・淡藍などの地に雲母をまいた高雅な料紙を用い、形が桝のような方形である為にこの名で呼ばれています。字形は豊円で、線の細太変化と墨色の濃淡が交錯して現れる明暗の美しさは、他に類を見ず、優艶・典雅な趣きがあります。 】

三 光悦の書(「光悦切」との関連)

【本阿弥光悦は鋭く細い線と太い直線とを交え,巧みな墨の配置によって個性的な書境を作り出している。光悦は初め青蓮院流を学んだが,漢字の書風からは中国元の張即之の鋭利な筆法がうかがわれ,仮名については〈本阿弥切〉と呼ぶ平安時代書写の〈古今集〉を所持していたと考えられ,それを習ったあとが見えている。そして,墨線の肥瘦の極端な変化を示すとともに,金銀の下絵料紙に散らし書とした色紙は,桃山時代の障壁画を連想させるきらびやかな意匠である。】(「世界大百科事典 第2版・平凡社」)

四 (その一)釈文(読み下し文)

やまとみことのうたはちはやぶる神代よりはじまりて、ならのはの名におふみやにひろまれり。たましきたひらのみやこにしては、延喜のひじりの御世には古今集をえらばれ、天暦のかしこきおほむときには後撰集をあつめたまひ、白河のおほんよには後拾遺を勅せしめ、堀川の先帝はももちのうたをたてまつらしめたまへり。
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