本阿弥光悦筆「千載集『序』和歌巻」(その四) [光悦・宗達・素庵]
その四 「わがきみ(我君)よ(世)をしろしめして……(その二)」
(桃山時代 17c 紙本雲母摺絵墨書 H-24.9 W-1459.7 所蔵 MIHO MUSEUM 猪原家旧蔵) (以下の※「校注」などは『新日本古典文学大系10 千載和歌集』などを参考)
http://www.miho.or.jp/booth/html/artcon/00002693.htm
4-1
ちか(近)く
なれつか(仕)ふ
まつり
とほ(遠)く
きき
つたふるたぐひ
まで
こと(事)にふれ
をり(折)
にのぞみて
(むなしくすぐさずなさけおほし。)
4-2
(のぞみて)
むなしく
す(過)ぐさずなさけ(情)
おほし。
はる(春)のはな(花)の
あした
(あきの月のゆふべ、)
※春の花のあした=「春の花の朝、秋の月の夜ごとに、侍ふ人々を召して事につけつつ歌を奉らしめ給ふ」(古今・仮名序)
4-3
あき(秋)の月のゆふべ、
おも(思)ひをのべ
こころ(心)をうご
かさずと
いふことなし。
あるときには
いとたけ(糸竹)
の
※糸竹の声=管弦。音楽。
4-4
(いとたけの)
こゑ(声)しらべを
ととのへ、
あるとき(時)には
やまと(大和)もろ
こしの
うた(歌)ことば(言葉)を
あらそふ。
※大和もろこしの歌……=歌会・詩会、歌合・詩歌合などの盛行をいう。
4-5
(あらそふ)
しきしま(敷島)のみち(道)もさかりに
おこりて、
こころ(心)のいづみ(泉)
(いにしへよりも
ふかく、)
※敷島の道=和歌の道。
4-6(5-1)
いにしへより
も
ふか(深)く、
ことば(言葉)のはや
し
むかしよりも
しげ(繁)し
(ここにいまの世のみちを
このむ
ともがらの
ことのは)
※言葉の林むかしよりも繁し=和歌の隆盛によって撰集の機運の高まってきたことを言う。
(「追記メモ」その四) 千載和歌集の概要
http://kul01.lib.kansai-u.ac.jp/library/etenji/hachidaisyu/senzai/index.html
(基本情報)
下命者:後白河上皇(1127―1192)
成立年次:1188年
選者:藤原俊成
収録数:約1300首
巻数:20巻
序文:仮名
収録された主な歌人:藤原俊頼、藤原俊成、藤原基俊、崇徳院、和泉式部など
(概要)
平氏都落ちの年に後白河上皇が宣下し、源平の争乱期を経て、1188年に成立。「金葉和歌集」、「詞花和歌集」と続いた10巻による構成から、「後拾遺和歌集」以前の20巻による構成に戻し、神祇、釈教を独立して1巻とした。また、僧侶の入選が増加し、全体の約19%(248首)を占め、これは勅撰和歌集では最高の比率である。
「詞花和歌集」の反古今的特徴や、同時代の歌人を軽視したことなど、「千載和歌集」の特色は、先の「詞花和歌集」への批判あるいは、正当な勅撰和歌集への復帰を目指した点にある。当代の歌人の比率も歌数では全体の50%に及んでいる。「詞花和歌集」の「をかしきさまのふり」(表現の奇抜さ)を批判的に包摂しつつ、古典的な叙情に立脚した歌風に特徴があり、中世和歌の世界が「新古今和歌集」で大成する予感を感じさせる。
(桃山時代 17c 紙本雲母摺絵墨書 H-24.9 W-1459.7 所蔵 MIHO MUSEUM 猪原家旧蔵) (以下の※「校注」などは『新日本古典文学大系10 千載和歌集』などを参考)
http://www.miho.or.jp/booth/html/artcon/00002693.htm
4-1
ちか(近)く
なれつか(仕)ふ
まつり
とほ(遠)く
きき
つたふるたぐひ
まで
こと(事)にふれ
をり(折)
にのぞみて
(むなしくすぐさずなさけおほし。)
4-2
(のぞみて)
むなしく
す(過)ぐさずなさけ(情)
おほし。
はる(春)のはな(花)の
あした
(あきの月のゆふべ、)
※春の花のあした=「春の花の朝、秋の月の夜ごとに、侍ふ人々を召して事につけつつ歌を奉らしめ給ふ」(古今・仮名序)
4-3
あき(秋)の月のゆふべ、
おも(思)ひをのべ
こころ(心)をうご
かさずと
いふことなし。
あるときには
いとたけ(糸竹)
の
※糸竹の声=管弦。音楽。
4-4
(いとたけの)
こゑ(声)しらべを
ととのへ、
あるとき(時)には
やまと(大和)もろ
こしの
うた(歌)ことば(言葉)を
あらそふ。
※大和もろこしの歌……=歌会・詩会、歌合・詩歌合などの盛行をいう。
4-5
(あらそふ)
しきしま(敷島)のみち(道)もさかりに
おこりて、
こころ(心)のいづみ(泉)
(いにしへよりも
ふかく、)
※敷島の道=和歌の道。
4-6(5-1)
いにしへより
も
ふか(深)く、
ことば(言葉)のはや
し
むかしよりも
しげ(繁)し
(ここにいまの世のみちを
このむ
ともがらの
ことのは)
※言葉の林むかしよりも繁し=和歌の隆盛によって撰集の機運の高まってきたことを言う。
(「追記メモ」その四) 千載和歌集の概要
http://kul01.lib.kansai-u.ac.jp/library/etenji/hachidaisyu/senzai/index.html
(基本情報)
下命者:後白河上皇(1127―1192)
成立年次:1188年
選者:藤原俊成
収録数:約1300首
巻数:20巻
序文:仮名
収録された主な歌人:藤原俊頼、藤原俊成、藤原基俊、崇徳院、和泉式部など
(概要)
平氏都落ちの年に後白河上皇が宣下し、源平の争乱期を経て、1188年に成立。「金葉和歌集」、「詞花和歌集」と続いた10巻による構成から、「後拾遺和歌集」以前の20巻による構成に戻し、神祇、釈教を独立して1巻とした。また、僧侶の入選が増加し、全体の約19%(248首)を占め、これは勅撰和歌集では最高の比率である。
「詞花和歌集」の反古今的特徴や、同時代の歌人を軽視したことなど、「千載和歌集」の特色は、先の「詞花和歌集」への批判あるいは、正当な勅撰和歌集への復帰を目指した点にある。当代の歌人の比率も歌数では全体の50%に及んでいる。「詞花和歌集」の「をかしきさまのふり」(表現の奇抜さ)を批判的に包摂しつつ、古典的な叙情に立脚した歌風に特徴があり、中世和歌の世界が「新古今和歌集」で大成する予感を感じさせる。