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鶴下絵三十六歌仙和歌巻(光悦書・宗達画)」周辺(その三十五) [光悦・宗達・素庵]

(その三十五)「鶴下絵和歌巻」O図(2-13 源信明)

鶴下絵和歌巻・O図.jpg

☆ 上部の欄外に加筆してある歌人・和歌
源重之 筑波山端山繁(しげ)山繁けれども 思ひ入るに障らざりけり(「俊」)
2-13 源信明 あたら夜の月と花とを同じくは あはれ知れらむ人に見せばや(「撰」「俊」)
(釈文)安多ら夜能月登華とを於那じ久ハ哀し連らら無人尓見世ハや

https://www.kyohaku.go.jp/jp/syuzou/meihin/kinsei/item02.html

https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/saneaki.html

   月のおもしろかりける夜、花をみて
あたら夜の月と花とをおなじくはあはれ知れらむ人に見せばや(後撰103)

【通釈】素晴らしい今宵の月と花とを、どうせなら物の情趣をよく理解している人に見せたいものだ。
【語釈】◇あはれ知れらむ人 もののあわれを知っているだろう人。仮想上の物言いであるため、「知れる」に未来推量の助動詞「む」を付して「知れらむ」と言っている。この「ら」は存続の助動詞「り」の未然形。

源信明一.jpg

信明朝臣/円満院門跡大僧正常尊:狩野安信/慶安元年(1648)  金刀比羅宮宝物館蔵
http://www.konpira.or.jp/museum/houmotsu/treasure_house_2015.html

あたら夜の月と花とをおなじくはあはれ知れらむ人に見せばや(後撰103)

源信明二.jpg

『三十六歌仙』(源信明)本阿弥光悦書(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288424

ほのぼのと有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの風(新古591)

https://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/saneaki.html

   題しらず
ほのぼのと有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの風(新古591)

【通釈】薄ぼんやりとした有明の月の光の中、紅葉を吹き下ろす山颪の風よ。
【補記】五・八・五・八・八と、三句も字余りのある珍しい作。『深窓秘抄』『近代秀歌』など多くの秀歌選に採られた、信明の代表作。「これも客観的の歌にて、けしきも淋しく艶なるに、語を畳みかけて調子取りたる処いとめづらかに覚え候」(正岡子規『歌よみに与ふる書』)。



(追記)「鹿下絵和歌巻断簡」の「シアトル美術館蔵」周辺(その八・その九)

鹿下絵シアトル八.jpg
「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」(シアトル美術館蔵その八)
鹿下絵シアトル九.jpg
「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」(シアトル美術館蔵その九)
http://art.seattleartmuseum.org/objects/14261/poem-scroll-with-deer?ctx=947bccb0-1f22-40c6-acef-ab7c81a74c67&idx=1

 上記の絵図の和歌(「その八」の「前半三行目」から「その九」の「前半五行(前二行は『その八』とダブル)」まで)は次の一首である。

383  堀河院御哥 [詞書]雲間微月といふ事を
しきしまやたかまと山のくもまより光さしそふゆみはりの月
(釈文)雪間微月といふ事を 堀河院御哥
 し支しまやた可まど山濃雲間よ利日可利左し曾ふ弓張の月

https://open.mixi.jp/user/17423779/diary/1966166888

しきしまや高円(たかまと)山の雲まより光さしそふゆみはりの月(新古今383)

「磯城島、そこにたかだかと聳える高円山の雲間から、ほのかに峰に光をあてている弓張月よ。」『新日本古典文学大系 11』p.122
堀河院(ほりかわいん 1079-1107)第七十三代天皇。白河天皇第二皇子。鳥羽天皇の父。
長治二年(1105)、最初の応製百首和歌とされる「堀河百首」奏覧。 金葉集初出。新古今一首。勅撰入集九首。
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